なすの日記

思考を散歩させるための場所

はかり

デンマークに来て3か月とちょっと。

日に日に短くなる日照時間とレポート提出の残り時間の中で憂鬱感を深めている僕だが、久しぶりに文章を書いてみる。

 

こっちに来て刺激を受けたことはいろいろあるが、その中でも最も驚いたのは

デンマーク人の労働時間だ。

僕は10階に住んでいるので向かいのオフィスビルの様子が完全に丸見えなのだが、

基本的に17時にはビルから人が消える。

というか、これを書きながら窓からビルを見ると16時にも関わらず昼間の4分の1くらいしか人がいない。

電車が最も混むのは16時頃なので、みんなその時間に退勤するのだろう。

ちなみに、僕の部屋から見えるオフィスビルはかなり有名なグローバル企業が中心に入居しているビルなので恐らく仕事がなくて暇なわけではない(と思う)

 

大学のオフィスは月水金の12時~15時しか空いていない。

本当に他の時間は何をやってるんだという感じだが、それでも世の中回っている。

 

デンマークに来る前から思っていたけど、日本人みたいに頑張って仕事をしなくても世の中ちゃんと回っていく。

そして、給料はそんなに高くないけど時間はたくさんある、みたいなライフスタイルで幸せを感じられる人はたくさんいるはずだと思う。

 

「東大生は悟りから遠い人が多いですね」MBA僧侶・松本紹圭氏が語る! | UmeeT

 

上の記事でお坊さんが「東大生は目の前にニンジンをぶら下げて頑張る馬みたいだ」と言っているけど、日本人のある層はみんなこういう感じだと思う。

ネットメディアには学生起業家やエリート会社員の英雄譚ばかりが取り上げられるし、

国家は「一億総活躍」とか言うし、

自分も何か頑張らなきゃ!という気持ちを煽られる。

努力を煽られる、というよりは理想とされる姿が画一化しているのかもしれない。

 

僕らが大学から社会へ出るまでの過程は、自分の望む社会的イメージ獲得のための闘争のようなものだ。

社会的イメージという言葉を簡単にすれば、他人から尊敬される仕事、ということになろうか。

しかし、個人的にはここで使われる尊敬という言葉は「羨望」とか「嫉妬」といった方がしっくりくる気がする。

他人から嫉妬されるような地位、自分を見た他人が劣等感を感じるような地位。

なんでこうなるかというと、多くの人が同じ物差しで価値を計る状況があるからだと思う。

基本的には世の中、上には上がいるので同じ物差しで人の成功度合いを計ると常に自分は誰かの下になってしまう。

しかし、それではこの世で幸せなのはビルゲイツやザッカ―バーグだけという話になってしまう。

それぞれが違う尺度を持ち、他人の物差しにはとやかく言わないという状況を作らないと

どれだけ身を削って頑張っても上には上がいて、いつも劣等感を感じることになる。

学校で教えられるべきは、上に登る方法ではなく、自分の物差しの作り方だろう。

 

僕が大学に入ったころは、何となく「意識の高い人」は批判される傾向にあったのだけど

紀里谷和明監督インタビュー「日本は末期だ。頑張る学生が笑われている。」 | co-media

こんな記事も最近よく見かけるようになった。

 

僕のここまでの書き方だとバリバリ働く人批判のように見えるかもしれないけど、

バリバリやりたい人はバリバリやって世の中を思う存分引っ張って思う存分稼いでくれ

ということであって特定の態度を批判するものではない。

 

さっきの物差しの話に戻ると、自分で作った価値観に忠実に生きていくにはその価値観への信頼が必要で、結局その信頼とは自己愛・自信になるのだと思う。

自己愛や自信というのはうぬぼれで、みんなが「自分大好き俺はなんだってできる状態」になればみんなバンドマンやパイロットや野球選手を目指すじゃないかそれじゃ世の中回らないじゃないかという類の意見はナンセンスだ。

それは自己愛・自信という言葉から「俺にできないことはねえ」的な力強く威圧的でヤンキーっぽいイメージを勝手に想起しているだけで、別の自己愛の持ち方はいくらでも種類があるはずだ。

 

しかし、「自分のことを愛しましょう!!」と言ってしまうと少々胡散臭い感じになるし何か違う気がする。

自分の物差しを信頼するということは、裏を返せば自分の価値基準に満たない部分を全部ぶっ壊して基準に適合する物を作る覚悟を持つということでもある。

今の自分の全てを正しいと思うのは自己愛ではない。

 

なんで労働時間の話からこんな話になったのかは不明だが

「俺は俺で勝手にやるので君も勝手にやってくれ、本当に困ったら助けてあげるから」

という感じの態度を持つことが大事なのかなーと。

大学は天国、社会に出てからは地獄。みたいな考え方が変わればいいなと思う。