スニーカー試論 ー靴とアイデンティティー
今、僕の靴箱には約20足の靴がある。
そのうち、1足を除き、全てがスニーカーである。
除かれた1足というのは、就活用の革靴だ。
最近、スニーカーブームが再燃しているとよく言われるけれども、自分の大学に限ればそんな雰囲気は、微塵も感じられない。
僕もスニーカーが好きになって日が浅いし、知っていることもごくわずかなのだけれども、「スニーカーヘッズ(スニーカー愛好者のこと)」とそれを取り巻くストリートファッションの現状を僕なりに解釈し、紹介してみたい。
スニーカーが生まれた歴史から語り始めても良いが、それよりも売れるスニーカーについて話してみよう。
僕は勝手に売れるスニーカーを3種類に分類している。
一つ目が、コラボスニーカー
二つ目が、有名人が履いたスニーカー
三つめが、とにかく目立つスニーカー
もちろん、この3つは重なり合うこともある(コラボのスニーカーを有名人が履いて爆発的に売れ出すこともあるということだ)。
まず一つ目のコラボスニーカーについて。
ファッションブランド同士のコラボレーションは近年盛んになっている。
コラボアイテムの多くは、生産数が少なく、プレミアになることが多い。
また、コラボにはスニーカーを作るノウハウのないファッションブランドが、ナイキやアディダスのテクノロジーを活用して、ブランド価値を高めるとともに、トータルコーディネートを完成させるという意図もある。
最も、人気のコラボの一つがナイキと伝説的ストリートブランド「Supreme」のコラボだろうか。
この画像のスニーカーは、ナイキのジョーダンブランドとSupremeがコラボしたものだが、価格は3倍以上に跳ね上がり、10万円近くで売られている。
コラボの原型となったAir Jordan5は、もとから人気のあるモデルなのだが、それが人気のブランドとコラボしたことでプレミア商品となってしまった。
「Supreme」ってなんやねん、という人のために解説しておくと、「Supreme」とは今、世界で最も人気の高いストリートブランドである。
スケートボーダーがニューヨークで開いたセレクトショップを起源に持ち、ルイ・ヴィトンやカルバン・クラインといったハイブランドの商品をあからさまにパクったり、該当の広告の上に勝手に「Supreme」のステッカーを貼る過激なプロモーションで一気に話題となった。
このブランドがどれくらい人気かと言うと、2016年末の秋冬新コレクションのリリース時には、2秒でオンライン上の商品が完売し、たった1日で約10億のページビューが記録された。
このモデル以外にも、ナイキと「Supreme」は定期的にコラボしているが、どれも即完売必至だ。
スニーカーヘッズの間で苛烈な競争を引き起こすのは、ブランド同士のコラボだけではない。
大物デザイナーやアーティストがスポーツブランドとコラボすることで生まれるモデルもある。
ごく最近発売された超大型コラボレーションとして挙げられるのが、ナイキとKawsのコラボだ。
Kawsは、バンクシーと並び、いま世界で最も金を生むアーティストの一人に挙げられる人物で、バツ印の目を持つキャラクターがトレードマークだ。
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Supremeと同じように、ミッキーやスポンジボブといったキャラクターの目をバッテンに変える完全にアウトなペインティングで人気に火がついた。
そして、上の画像が、Kawsとナイキのコラボモデルである。
正直、僕もどこら辺がかっこいいのかよくわからない。
もちろんベースとなったAir Jordan4はかっこいいし、人気の高いモデルである。
僕も真っ赤な奴を一つ持っている。
しかし、こんな一見地味な灰色の靴が(失礼!)オンライン上では20万近くの値段で取引されているのである(元値はおそらく4万円)。
ブランドというものは、不可解である。
スニーカーなんて言ってしまえば、全て色違いにすぎないにもかかわらず、マニアは何百足と収集するのである。
ただ、そのブランドが持つイメージを纏いたいというのがスニーカーヘッズたちの欲望なのだろう。
ストリートファッションには、「いかに反抗的か」という視点が求められる。
ハイブランドを始めとした既存のカルチャーに中指を立て、時に訴えられるほどの抵抗をしたブランドが、カウンターカルチャーの担い手となる。
その意味では、スニーカーブームは消費によってアイデンティティを形成する現代人の分かりやすい例であるともいえる。
今回は、試しにコラボスニーカーについて語ってみた。
気が向けば、他の2つの「売れるスニーカー」の要素と現代社会に関わりについて書いてみたい。